感染症情報(2024.4.1)

★インフルエンザウイルスはB型の発症はまだ続いており、A型の発症も認められました。学校が春休みに入り、少し落ち着いてきました。

★溶連菌感染症も多いです。
発熱後に手足を中心に発疹が出ることもあります。
腎疾患を予防するために10日程度、抗生物質の内服が必要となります。

★2月の終わりからアレルギー性鼻炎(花粉症)が増えています。


★通年性にインフルエンザウイルス、アデノウイルス感染の発症は続いています。多くは熱・咳・咽頭痛などの上気道炎(いわゆる風邪)で、2-3日で解熱します。4日以上続く場合はアデノウイルス感染であることが多いです。但し、検査をしてアデノと分かっても、アデノに特化した薬はありません。


※【全国的に「タミフル(インフルエンザ治療薬)」「風邪薬」が不足しています】
インフルエンザには治療薬(熱の期間を24時間短縮するという効果)はありますが、それ以外のウイルス感染症は(コロナやアデノも含めて)すべて対症療法(熱さまし、咳止め、鼻水止め、など)の薬しかありません。一つ一つのウイルスに対して自分の体が免疫力を持つことによって治癒します。規則正しい生活と栄養、休息など、体力作りを心掛けてください。


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★子どもの【蜂窩織炎】の発症が目立っています。細菌感染が原因で、組織の深いところに化膿性炎症を起こします。顔や足に多く、患部は赤く腫れて痛みがあり、熱を持つこともあります。自然治癒することは殆どなく、抗生物質の点滴治療が必要です。なかなか治らない化膿性の皮膚病変がある時は、早めの受診をご検討ください。

★子どもの【ヘルペス性歯肉口内炎】が例年になく多いです。単純ヘルペスウイルスの感染により口内炎が多数出現し、歯ぐきが赤く腫れて、高い熱が2~5日続きます。口の周りに水疱が及ぶこともあります。抗ヘルペス薬が内服できれば症状軽減が期待できますが、痛みで薬も飲めず入院加療が必要となる場合も多いです。発熱と共に歯茎の腫れや痛みがある場合は早めにご相談下さい。


※痙攣や意識消失 (呼びかけや痛み刺激に反応しない)は重篤な症状です。このような場合は躊躇なく救急車を要請し、高度専門医療機関を受診して下さい。また、生後2か月未満の38℃以上の発熱は急激に状態が悪化しますので、入院施設のある病院を直接受診してください。

《インフルエンザの検査キットが全国的に不足しています》~周囲の感染情報に留意してください~

「熱が出た」という時点では何が原因なのか、感染症であればウイルス(インフルエンザ、コロナ、アデノ、その他の風邪ウイルス)なのか細菌(溶連菌など)なのかは、わかりません。この時、助けになるのは周囲の感染状況です。保育園、幼稚園、学校での流行状況を確認しましょう。園や学校は児童生徒の保護者に感染の流行をお伝えしています。

【後から診るほど名医】という言葉があるように、「熱が出た」から始まり、発疹が出たり、下痢をしたりなど、その感染症に特徴的な症状が出てくると診断がつくようになります。例えば川崎病は「5日間続く熱」が診断基準に入っており、3日間続いた熱が下がった途端、全身に特徴的な発疹が出れば突発性発疹だったと診断できます。インフルエンザであれば、インフルエンザの薬があり、溶連菌も薬(抗生物質)があります。逆に言えば、インフルエンザと溶連菌以外のほとんどすべての子どもの感染症(コロナ、アデノ、RS、ヒトメタニューモであっても)は、その病原体に対する特異的な薬はありません。病原体が検査で分かったとしても、すべては同じ対症療法(咳止め、熱さましなど)となります。感染症の大部分を占める"風邪ウイルス"は2~3日熱が出て、そのあと咳、鼻水が続き、1~2週間くらいの間に子ども自らの免疫力で軽快していきます。

子どもが罹る風邪ウイルスの種類は200種類以上あります。園に通う子どもの中には「この子はずっと風邪をひいている」と思われる子もいるかもしれませんが、風邪ウイルスはその都度、種類、型番、株等の違いがあり、同じ風邪をずっと引いているわけではありません。一つウイルス感染をクリアするごとに、体がその免疫抗体を持ち、一つ子どもは強くなります。自分の体の中に抗体ができれば治ります。そうして子どもは自分の免疫力を鍛えて成長していきます。大きくなってからはそれほど高い熱を出さなくなる所以です。そして、薬はそれを助けるものでしかありません。命を落とす危険が高い感染症に対しては予防接種があり、体の中にあらかじめ免疫力を持たせて来るべき感染に備えます。

インフルエンザに関しては、インフルエンザの薬があり、早く内服する方がよいですが、全国的に検査キットが不足しています。当院でも入手が困難な状況です。周囲の感染状況に留意してください。子どもが通っている場所でインフルエンザが流行し、その集団で過ごす中で熱が出ればインフルエンザである可能性は極めて高く、臨床所見と合わせて診断がつけば早期にインフルエンザとみなしてインフルエンザに対する薬を開始することができます。鼻の奥まで検査棒を挿入する、子どもにとっては非常に苦痛な検査をする必要もありません。また、基本的なことですが十分な休息・睡眠と、適度な運動、栄養や水分を摂って、基礎体力をつけていく生活を心掛けてください。

JAとりで通信「連携医のご紹介」に掲載されました


 取手市井野地区に開業して、この4月で5年が経過しました。当院は、JAとりで総合医療センターまで車で5分と近く、これまで患者さんの紹介などでお世話になって参りました。5年前は新しく道路が開通したばかりで、周辺は閑散とした印象でしたが、その後、住宅などが次々と建てられ、以前よりにぎやかになってきました。
 5年前に赤ちゃんだったお子さん達は、今では年長児や小学生となり、病気で受診する頻度はだんだん減ってきました。代わりに弟さんや妹さん達、取手市に転入されたご家族など、新しい顔ぶれで、院内はにぎわっています。これからも初心を忘れず、地域の子ども達が優しく健やかに育つよう、尽くして参りたいと存じます。

~卵黄を食べた後に激しい嘔吐が起こる乳児の病態について~

『第125回日本小児科学会学術集会』の発表から
「離乳食として6ヵ月から卵黄を少量ずつ与える」ことについての考察


2013年まで発症がなかった卵黄による食物タンパク誘発胃腸炎(Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome: FPIES、通称エフパイス)が2018年から急増しています。

発症は10ヵ月前後の乳児、男女差はなく、卵黄を食べて1-3時間後に激しい嘔吐、低血圧、低体温を来します。嘔吐による窒息や低血圧によるショック状態は危険です。

通常よく知られている即時型食物アレルギーによる皮膚症状(蕁麻疹や発赤)や呼吸器症状(ゼーゼー苦しそうな呼吸になる)は伴いません。
アレルギーの血液検査(IgEや抗原検査)は陰性であることも特徴の一つです。
また、全症例で、「最初は食べてもなんともなかった」ということで、
初回の摂取で症状が出る即時型の食物アレルギーとは病態が異なります。
入院管理のもと、原因となる食物負荷をかける診断的治療によって、平均120日程度で軽快するとの報告もありました。

2017年頃より、離乳食として生後6ヵ月頃から、卵アレルギーを減らす目的で、「固ゆで卵を半分に切り、卵黄を少量から食べさせる方法」が奨励されていることと関連があるのではないかという意見が多く出されていました。
症例数がまだ少ないこともあり、明確な因果関係は不明ですが、「卵や牛乳は生後10ヵ月~1歳くらいで始めましょう」という離乳食の指導をしていた頃には見られなかった疾患概念であることは確かです。
上記の通り「入院による食物負荷により平均120日で軽快」するとすれば、
生後6ヵ月ではなく、以前のように生後10ヵ月位から卵を始める方が安全ではないかと感じました。

子どもの事故

【アルコール消毒液が子どもの顔にかからないように注意】
Covid-19感染対策でアルコール消毒液が各所に置かれるようになりましたが、ちょうど幼児の顔の高さ辺りに設置されているケースが多いという報告されました。小さなお子様の目にアルコールが入ったりしないように、十分気をつけながら、手指の消毒を行うようにしましょう(2020年11月)

【ウォーターサーバーによるやけど事故】
最近、ウォーターサーバー(冷水・温水が出るタイプ)を使用するご家庭が増え、子どもが温水を出してしまい、やけどをする事故が増えているという報道がありました。チャイルドロックがあっても事故が起きているということなので、お使いの方は十分注意されてください(2019年4月)


子どもの発達段階に応じて、起こりやすい事故の傾向がわかっています。
【新生児から生後4ヶ月】では、ベッドからの転落、毛布などでの窒息、入浴中の溺水
【生後5~11ヶ月】では、圧倒的に誤飲による事故が増えてきます。
 更には、お座りが出来るようになりうっかり目を離した隙に子供用の椅子からの転落、また暖房器具などによる火傷も多い事例です。
【1歳~2歳】では、豆類が気管に入り窒息、ビニール袋での窒息、調理器具なのによる火傷、お風呂場での溺水です。
【3歳~5歳】では、道路への飛び出しによる交通事故、ベランダからの転落、ライター・花火での火傷、などがあげられます。
今一度、家庭内の電化製品(ドラム式洗濯機に入り込まないような装置があるか、万が一倒れてもお湯が漏れない電気ケトルか、等)の見直しをお願いいたします。

①誤飲(直径約3.5㎝以内の小さなおもちゃ、たばこ、薬、化粧品、等はこども手の届かない1mより高いところに置くようにする)
②溺水(10㎝程度の水位でも非常に危険、お風呂の残し湯はしない)
③転倒、転落(ベランダや窓辺に子どもがよじ登れる物を置かない)
特に1歳半から2歳くらいになると、自分で歩けるようになり、好奇心旺盛な子供が次に何を突然始めるか、予測がつきません。子どもから目を離さないように気をつけましょう。
④暖房器具によるやけど(ストーブには柵をするなどの工夫を)また、熱湯はこどもが触らない高さ(1m以上)で扱う、台所で遊ばせない等、注意しましょう。

乳児はしっかり  肌(はだ)を離すな   
幼児は肌を離せ 手(て)を離すな  
少年は手を離せ  目(め)を離すな  
青年は目を離せ  心(こころ)を離すな 

『アメリカンインディアン 子育て四訓』より

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